
カードゲームの世界で名を馳せてきた強豪たちが、フレッシュ&ブラッドの世界へ挑む!
優勝賞金100万円と、己の培ってきたカードゲームプレイヤーとしての矜持を懸けた戦い、「King of Games」がついに幕を開けた。本大会はクラシックフォーマットによるBO1のシングルエリミネーション方式で行われ、参加者は一度の敗北が命取りとなる緊張感の中で対戦を繰り広げる。
この至高の舞台へと誘われし、選び抜かれた精鋭たち。ここでは、そんな4名のプレイヤーを紹介していこう。
「鋭刃の覇者」 山村 翔馬

プロツアー:アムステルダム優勝者、山村 翔馬。フレッシュ&ブラッドの競技シーンを追いかけているプレイヤーにしてみれば、言わずと知れた存在であろう。
間違いなく日本を代表するプレイヤーの一人であり、今この日本において、最もKingの称号に近い男と呼んでも過言ではない。そんな世界の舞台で頂点に立った彼へと挑む者たちの名は──
「青き猛虎」 綾虎

「青き猛虎」 綾虎。穏やかな人柄に隠された牙が、この日を待っていたとばかりに参加者たちへと差し向けられる。
綾虎の最大の武器は冷静な戦況分析にある。緻密な思考と大胆な駆け引きが繰り広げる研ぎ澄まされたプレイングは、王者である山村へと届くだろうか?
「血闘者の挑戦」 シーアーチャー

「血闘者の挑戦」 シーアーチャー。まだフレッシュ&ブラッドを始めて日の浅い彼だが、その卓絶したセンスは経験の差を埋める解答を導き出した。
競技者として自らの価値を証明せんと、磨き上げたその戦略で戦いへ臨む。シーアーチャーが今大会でどのようなプレイを見せるのか。ぜひご注目いただきたい。
「影からの刺客」リグゼ

「影からの刺客」リグゼ。その明るい人柄は周囲を惹きつけ、関東のフレッシュ&ブラッドコミュニティを巻き込んで関西の雄である山村を打倒すべく調整を重ねてきた。
リグゼは、勝負の世界において自らの価値を示すための最高の手段を知っている。あとはそれを実行に移すだけだ。
King of Gamesの座に集った4名のチャレンジャーたち。果たして、この熾烈な戦いを制し、栄光を手にするのは誰か。激闘の幕が、いま上がる。
第1ゲーム:綾虎 vs. 山村 翔馬 —— 攻め続けた山村、堅守を崩す
着席した2人は、その表情にわずかに緊張を浮かべながらゲーム開始の準備を進める。
互いにヒーローを公開する段となって、綾虎が山村へと見せたのは《朽ちた森の先触れ、フローリアン》。対する山村の持ち込んだデッキは《緋色の復讐者、アイラ》だ。
《フローリアン》にとって、《アイラ》との相性は決して悪くない。というより、綾虎は山村の使用デッキを読み切ってデッキ選択をしている。これには山村も試合開始前から苦笑を浮かべる。
やがて互いにデッキと装備品を整えると勝負が開始される。序盤から大きく動き出したのは先攻の山村だ。綾虎が攻めあぐねたターンを見計らい、自身のライフを調整しながら《傷には傷を》を起点に攻撃を仕掛け始める。

綾虎
《傷には傷を》、《背後からの痛撃》、《調和の小太刀》による連続攻撃と《警報音》。間断のない鮮やかな連続攻撃に綾虎は早くもロープに追い込まれる。
綾虎は反撃の糸口を探るべく、防戦に徹しながらも《朽ちた森の先触れ、フローリアン》の能力の条件を満たそうとするが、なかなか大地カードを引くことができず、いつまで経ってもその能力が開花することはない。

山村 翔馬
それでも、綾虎は《アークナイトの掌握》と《命刈りの刃》を駆使し、なんとか大きくライフを離されることなく食らいつく。だが、やっと《朽ちた森の先触れ、フローリアン》の能力が使えそうな算段がつくころには、残されたライフは3点のみとなっていた。
そして残りわずかとなったライフを削ることにおいて、《調和の小太刀》を使いこなす《アイラ》はフレッシュ&ブラッド随一の存在だ。綾虎はなんとか生き延びる術はないかとギリギリまで粘るが、最後は山村の《二重の脅威》が強烈な一撃を浴びせ、綾虎を介錯した。
《朽ちた森の先触れ、フローリアン》が公開されたときには苦い顔を浮かべていた山村だったが、序盤から仕掛けた攻撃の手を一度も緩めず、忍者の十八番である連続攻撃で綾虎の堅い防御を突破。華麗に勝利を掴み、山村が決勝へと駒を進めた。
第2ゲーム:リグゼ vs. シーアーチャー—— シーアーチャーのコンボをリグゼが差し切る
山村との対戦を見据えてリグゼが持ち込んだヒーローは《流星のアウローラ》。
『ロゼッタ(Rosetta)』リリース以降、その名に表されるように流星のごとく環境上位で輝く強力なルーン剣士だ。リグゼは「都内のカードショップで関東のフレッシュ&ブラッドコミュニティのみなさんの助言を受け、山村さんを倒せるデッキを持ってきました」と語る。
対するシーアーチャーが持ち込んだのは《エーテルのドラカイ、ケイノ》。
対するシーアーチャーが持ち込んだのは《エーテルのドラカイ、ケイノ》。「経験で劣る自分が(山村に)勝つにはコンボで押し切るのが一番だ」と語った。カードゲームの世界でひたむきに勝利を目指してきたシーアーチャーだからこそ、自身の経験はまだ足りていないと客観的に分析できているのだ。互いに山村との戦いを見据えて臨んだこの戦い。たった1つの決勝の席を懸けて戦う。
まずは装備品の公開。秘術ダメージによる攻撃を得意とするケイノを相手取るに際し、リグゼは「入れるかどうか迷った」という《電撃の魅了者》に救われた形となった。
やがてゲームが開始されると、さっそくシーアーチャーが《エーテルのドラカイ、ケイノ》の能力でデッキの上から次々にカードをめくっていく。ここでなんと第1ターンにプレイしたカードは《エネルギー・ポーション》と《Clarity Potion》。シーアーチャーが、コンボ始動に向けて絶好のスタートを切った。
対照的にリグゼはまっすぐに攻めたてる。初期ライフが30点しかない《ケイノ》は、閃光のごとき猛攻撃にわずか4ターンで残りライフ1というところまで追い込まれてしまった。
もはや猶予のないシーアーチャーは、一気呵成に手札の青いカードを次々ピッチ。《ケイノ》の能力を連続使用し、デッキトップとの対話を始める。

リグゼ
ここまでに《Eye of Ophidia》や《エーテルの糸紡ぎ》による「選択」を道標にたどり着いた最後のターン。めくれるのは《エーテルの猛火》、《ソニックブーム》、《熾火》……次々に公開されていく致命的な「呪文」の数々に、リグゼも不安そうな表情を隠せずにいた。
30点あったリグゼのライフはいつしか4まで削られていた。《ソニックブーム》の能力を解決し、デッキの一番上──これだけは「選択」できなかった、運命の1枚をめくる。

シーアーチャー
そして審判は下される。神は今回はシーアーチャーを「選択」しなかったようだった。デッキトップに有効なカードがなかったことを確認すると、今度はシーアーチャーがリグゼの攻撃を見守る番だ。
そう、実はこのときリグゼのターン中。解決を待っていた《孤光の稲妻》が、リグゼのトーナメントの続行を決めた。
決勝戦:リグゼ vs. 山村 翔馬—— 互いに譲らぬダメージレース
King of Gamesの決勝戦。競技者としての栄光と多大な賞金を懸け、リグゼと山村の一騎打ちが幕を開ける。
リグゼは《流星のアウローラ》を手に、山村翔馬の《緋色の復讐者、アイラ》を徹底的にマークしていた。
何度もテストプレイを繰り返し、あらゆる攻撃に対応できるプランを用意してきた。世話になったカードショップや仲間たちへの感謝を胸に、持てる力のすべてをぶつける覚悟だ。
対する山村も、自身が参加者全員の仮想敵になっていることを理解していた。それでも彼に一切の迷いはない。まっすぐに、フレッシュ&ブラッドの世界を歩み始めた後輩たちへ、最高の戦いを見せるために。その信念を証明するかのように、彼は迷うことなく《緋色の復讐者、アイラ》のデッキを手にする。
そして、決勝戦の幕が上がった。
後攻の山村は、第1ターンから《調和の小太刀》、《背後からの痛撃》、《調和の小太刀》、そして《征服の命令》と、踊るように軽快なプレイでリグゼのライフを切り取っていく。

対するリグゼも負けてはいない。《放電》と《稲妻の圧壊》によって強化された《秘魔術の衝撃波》で、すぐにライフ差を縮める。だが、山村は圧倒するかのような2枚の《二重の脅威》で強烈な攻撃を仕掛け、一気に試合の流れを掴みにかかる。
アイラの怒涛のターンを終え、リグゼのライフは大きく削られた。だが、ここでリグゼは冷静に戦況を分析する。山村のライフが上回り続ける限り、《傷には傷を》の効果は活かせない。そう判断したリグゼは、的確にカウンターを狙い、山村の《最も脆い所》に合わせて《稲妻峡谷の導き》をプレイ。反撃の狼煙を上げた。
リグゼは《傷には傷を》を放ち、これが山村の《嵐からの退避》で防御されると、即座に《電磁回転》で対応。さらに《スターフォール》を挟みながら、もう一度《傷には傷を》で攻める。山村は2枚目の《嵐からの退避》を使うが、これで防御リアクションをほぼ使い果たしてしまった。続く《Exude Confidence》が重くのしかかり、山村は最後のリソースを削られ、《フィエンダルの春のチュニック》すら防御に回さざるを得なくなる。

リグゼは《稲妻峡谷の導き》を維持したまま、実質的な追加ターンを得ると、続くターンにも凄まじい猛攻を見せる。あっという間にライフ差は12対13のほぼイーブンとなり、試合は後半戦へ突入。互いに連続攻撃を得意とするヒーロー同士、攻撃と防御の応酬によって、着実にゲームは決着に近づいていく。
そして、最終局面。リグゼは引き込んだ《孤光の稲妻》をプレイ。秘術ダメージは《虚空のルーンのグローブ》で防がれるが、次の《スナッチ》を山村の手札2枚と交換し、さらに《飽くなき無秩序》で最後の手札を奪い去る。
再び手札がなくなってしまい、何もできずにターンを終える山村。これに対し、リグゼは4枚の手札をじっくりと見つめ、深く息を吐く。そして、ゆっくりと《アークナイトの掌握》の能力の使用を宣言すると、《ルーン陣》を得ながら《放電》で強化された《稲妻纏い》をプレイする。
残りライフ1点となった山村に選択の余地はない。残された手札をすべて使い、防御を宣言する。
そしてリグゼは待っていた。その瞬間を。《稲妻の圧壊》を、その手から卓上へと置くその瞬間を。
山村の防御値を上回るこの一撃が、残り1点のライフを削り取り、King of Gamesの覇者がここに決する。
King of Gamesを終えて
山村、綾虎、リグゼ、シーアーチャー。
この日、異なる出自の、異なるスタイルを見せた4人のプレイヤーたちが「King of Games」という一つの頂きを目指して戦い、それぞれの挑戦が一つの結実を迎えた。

シーアーチャー、リグゼ、山村、綾虎(写真左から)
攻めるか、守るか。限られた選択肢の中で最善を探し続ける時間。手札を見つめる眼差し、最後の一撃を決める瞬間の静寂、そして勝者が放つ安堵の息。彼らのプレイの一つひとつにフレッシュ&ブラッドというゲームの体験が凝縮されていたように思う。
フレッシュ&ブラッドは、ゲームが続くにつれヒーローたちが疲労していくという、少し変わったデザインのカードゲームだ。装備は壊れ、デッキの中の強力なカードは消耗し、残り数点のライフをせめぎ合う。ターンごとにドラスティックに場面が移ろい、ライフメモにはプレイヤーとヒーローがともに戦った歩みが刻まれていく。
「King of Games」の戦いは幕を閉じた。
勝者は決まり、ひとつの頂が踏破された。だが、それぞれの選択や駆け引き、積み重ねた経験、その全ては。プレイヤーたちが挑戦を続ける限り、また次の歩みへとつながっていく。
それでは、King of Gamesの激戦を制した者の名をここに刻もう。

King of Games、優勝者はリグゼ! おめでとう!