霧が晴れ……視界が開けていく……
プロツアー:ロンドンの熱気冷めやらぬ中、プロクエスト:シンガポール第1週がメタゲームに大きな変化をもたらした。予想通り 《エニグマ》 と《ゼン》がリビングレジェンドの仲間入りを果たし、暗殺者、守護者、ルーン剣士たちが表舞台に浮上し、《アウローラ》 の座を脅かす余地が生まれた。
《アウローラ》と 《エニグマ》が支配的だったにもかかわらず、第1週ではさまざまなヒーローが勝利を収めている。今回の環境変化により、《フローリアン》、《ヌゥ》、《ヤール》 のような堅実で長期的なゲームプランを持つ強力なヒーローたちが、《エニグマ》対策に縛られず本領を発揮することが期待される。
それでは、第1週の注目すべき優勝デッキリストを紹介していこう。

《朽ちた森の先触れ、フローリアン》
緑の季節がやってきた!《フローリアン》は プロツアーでも人気の選択肢であり、《アウローラ》、暗殺者、その他のデッキに強い点が評価された。遅めのゲームプランに依存しているため 《エニグマ》相手にはやや苦戦したが、その障壁が取り除かれた今、まさに春の訪れとともにその花びらを開きつつある。これまでも 《フローリアン》は優れたデッキとして知られていたが、今後はルーン陣を蓄積していくような戦略をより自由に展開できる余地も生まれている。
いったん 《フローリアン》の動きが始まれば、その出力は非常に高い。例えば「続行」を活かして《王位の切り倒し》に繋げたり、《アークナイトの掌握》と《命刈りの刃》で1枚から5点出したりといった動きが可能だ。とはいえ、典型的なアグロデッキとの最大の違いは、その“数値”が攻守に分かれていることであり、それによってあらゆる盤面に柔軟に対応しつつ反撃の手を保つことができる点にある。《アウローラ》のようなヒーローにとっては、この安定した対応力を毎ターン上回るのは容易ではない。《フローリアン》はまた、《戦慄の演奏》、《堅固な接地》、《煉獄の相貌》など、多様な防御手段や妨害手段を備えており、暗殺者 に対しても堅固な備えがある。さらに、《王位の切り倒し》を墓地に置いておくことで《Codex of Frailty》をかわす動きも可能だ。
《傲岸不遜、ヴィクター・ゴールドメイン》
長きにわたり門前で時を待っていた《ヴィクター》。幻術士たちにより栄光の時代を断たれた彼が、ついに“黄金の申し子”として休暇から戻ってきた。目指すは当然、自らの正当な称号だと信じる「《アウローラ》キラー」の座。《ゼン》が環境を支配していた時代と同様に、《ヴィクター》は 《アウローラ》や打たれ弱いアグロデッキを古典的な手法で懲らしめにかかる。《震盪撃》、《脊椎の粉砕》、《殴打》、そして 《Crush the Weak》といった妨害カードは、忍者や暗殺者の殺到するような戦闘チェインを止めるには十分だ。
とはいえ、《ヴィクター》にとって厳しい相手が残っているのも事実だ。《ヌゥ》は時間が経つほど有利になる構成であり、それに対抗するには《ゴールドメインの地所の訪問》を絡めたビッグターンで競り勝つ必要がある。ルーン陣を大量に展開する 《フローリアン》もまた、《ヴィクター》の「投資計画」にとっては相性が悪い。だが、すでに《玉璽の命令》のような新たな「テクい」カードが登場しており、《ヴィクター》は《支配の王冠》と組み合わせて巧みに活用している。これまで 《エニグマ》対策に割いていた《決意の腕当て》や《金魚草の登攀者》《啓示の一撃》といったサイド枠が空いたことで、《ヴィクター》や 《ヤール》にとってはこれらの苦手なマッチに対応する余地が広がり、守護者を復権させることができるかもしれない。
《Riptide, Lurker of the Deep》
熱烈な《Riptide》愛好家たちの奮闘を、我々は忘れていない。彼らは日々、罠を張りながら結界・オーラを壊しながらなんとか戦ってきた。《リップタイド》は 暗殺者に非常に強いという珍しい立ち位置にあり、構築次第ではレンジャークラスにとって伝統的に苦手とされる 魔術師や幻術士に対しても、なかなか悪くないパフォーマンスを発揮する。ただし、《ヴァーダンス》や《プリズム》に備えた構築にするには多くのものを犠牲にしなければならず、《フローリアン》相手もまたかなりの苦戦を強いられるだろう。すべてに勝つことはできなくとも、プロツアー:シンガポールの参加権利を勝ち取る程度には、勝利を掴めるかもしれない。
今後のメタゲームでは、罠カードがなかなか“美味しい”選択肢になりそうだが、《リップタイド》の真価はその格納庫の柔軟性にある。《アウローラ》の4点ラインや、暗殺者 の終わりなき攻撃反応を受け流すため、現在は防御リアクションが非常に人気となっている。《Dreadbore》はそうした防御策を完璧に咎めるカードであり、1コストの矢でも関連するヒット時効果によってダブルあるいはトリプルブロックを強要できる。もちろん、黄色のカードをピッチする必要があるが、0コストの矢を投げるような軽量ターンでは、相手ターン中に罠を使ったり自分のターンでパンプを使ったりすることで、弓のためにピッチする代わりに 《リップタイド》の能力を活用できる。
今年行われるプロツアー:シンガポールにおいて、究極の栄誉をかけた戦いに挑む権利を手にした、プロクエスト 第1週の優勝者たちよ、おめでとう!来週からは新たなメタゲームに突入する。果たして 《アウローラ》はその輝きを保ち続けるのか、それとも環境の急変によってその座を奪われるのか……答えを知る方法はただ一つ、それは見届けることだ。