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禁止・制限告知

フレッシュ&ブラッドはこの10月で5周年を迎えます。今までに3,000枚以上のユニークなカードを14個のセットを通して発売し、更に2025年に発売予定の3つのセットを現在制作中です。FABが世界中のファンに愛される世界的なゲームへ成長していく過程を見るのは、掛け替えのない最高の旅路でした。

この記事は元々、10月に予定されている5周年記念コンテンツの一部として (10月1日に発表予定だった禁止制限告知と共に)公開予定でした。しかし深く検討した結果、ロゼッタ:ワールドプレミアの前にこの記事を公開するのがプレイヤーのためになると判断し、今これを発表することを決定しました。これにより、プレイヤーは今後の新環境をより正確に考察でき、ロゼッタシーズンのカードの評価や採用について適切な判断を行うことができます。

私たちはフレッシュ&ブラッドを2019年10月11日に発売する前の数年間を費やして、現在良く知られているこの革新的なゲームシステムを設計・開発しました。発売後に繰り返した社内プレイや、世界中のTCGプレイヤーがゲームシステムの限界まで挑む姿から得た知識は大きく、私たちがこの最初期の開発段階や発売直後に得た知識や経験はほんの小さなものでした。

継続的な学習と改善は私の人生におけるライフワークの一つであり、 Legend Story Studiosが掲げる重要な価値観でもあります。また、学習と改善には常に反省が付属するものだとも考えています。5周年を迎えるにあたって現在のゲーム環境の状況を振り返り、ゲームシステムの優れている点や脆弱性について学習したことを活かして、次の5年間もファンが素晴らしいゲームを楽しめるよう努めていきたいと考えています。

フレッシュ&ブラッドのデザイン原則の再確認

2019年にFABを開始したとき、私たちは世界中のゲームストアにウェルカムキットを送りました。その中にはフレッシュ&ブラッドのデザイン原則を記載した小冊子が含まれていました。以下はその冊子の該当部分です。

JP Design Priniciples

今これらのデザイン原則を振り返ると、いくつかの原則は今も守られ、いくつかは破られています。1つはもはや機能に関するデザイン原則ではなく、事実の宣言となっています。

I. 最初が最強
これは今も正しいですが、もはやこれは機能に関する原則ではなく、フレッシュ&ブラッドのゲームシステムが現在どのように機能しているかの事実についての宣言です。

II. 不確実性の縮小
FABが導入した革新的なピッチシステムは、このデザイン原則のオリジナルの意図を今も守っています。ゲームの最初のターンから、プレイヤーはゲームシステムの基本的なリソース (リソースポイントとアクションポイント) の使用が保証されています。FABは他のゲームと違い、リリースへのアクセスが確約されています。

すべての不確実性が悪いわけではありません。実際には運の要素はゲームデザインにおいて重要であり、ゲームに良い影響を齎します。しかし、プレイヤーが運の良し悪しによって手も足も出ず、ゲームに参加できなくなるのは悪い影響です。これをエージェンシー(行為主体性)、つまり意思決定の自由度と呼ぶこともあります。FABのピッチシステムはリソースシステムの仕組みによってこれを解消し、今もFABのゲーム体験における際立った特徴として機能しています。しかし、エージェンシーの減少は他の方法によってフレッシュ&ブラッドのゲームに入り込んでいます。現在、これはゲームの寿命を長期的に保つことに対して望ましくないレベルに達しています。

III. 全てのカードが重要
この原則は常に守られています。アーキタイプや対戦相手のデッキに依存していますが、この原則は長い間変わることなく守られてきました。この原則において、すべてのゲームでデッキが"2周目"に必ず到達することは求めていません。しかし、2周目を利用するデッキがメタゲーム上で重要な立ち位置にあることを望んでいます。

IV. 英断は幸運に勝る
フレッシュ&ブラッドのゲームでは、数多くの良い決断を積み重ねることで、徐々にアドバンテージを得ていき、最終的に勝利することを目指しています。現在、ゲームの勝者が"幸運"によって決まる問題はあまり多く見られません。しかし、最近は過剰に強化された優位的な攻撃が多く発生しすぎています。プレイヤーが多くの良い決断を積み重ねたとしても、それがゲームに与える影響が薄れている状態にあると考えています。

簡単に言うと、フレッシュ&ブラッドは4枚のカードを使用するターンを繰り返すゲームです。プレイヤー達は自身のカードで対戦相手へと攻撃し、アドバンテージを得ていくことを目指します。我々がプレイヤーへ提供するクエストは、この基本的なサイクルからどのように抜け出すかということです。例えば格納庫のメカニズムはカード枚数で5対4の状況をセットアップし、優位的な攻撃を行うことが可能です (もちろん、防御プレイヤーが格納庫に防御リアクションを伏せていれば、5対5で同等な状態です)。装備品も攻撃や防御に使用することで、仮想的な手札のカード枚数を増やすことができます。

私たちは常に、プレイヤーに優位的な攻撃を作り出す方法を提供し、殆どのゲームでデッキのカードが無くなるよりも先にヒーローのライフが0になることでゲームが終了することを目指してきました。しかし、最近ではこの優位な攻撃が極端かつ頻繁に発生するようになり、多くの"英断"を積み重ねて勝利するという原則が崩れてしまっています。特に問題となっているのは、アクションポイントを消費せずに即座に追加のカードを得られるカードや、アクションポイントを簡単に追加したり消費を回避したりできるヒーローです。

エージェンシーには多くの見方や評価方法があります。例えば《過去の清算/Red in the Ledger》、《戦争屋の外交術/Warmongers Diplomacy》、《セイレーンの呼び声/Siren’s Call》、《Arc Light Sentinel》、結界が支配する盤面や圧倒のような効果は、エージェンシーを制限している例として議論されることがあります。しかし、エージェンシーを減少させたり制限したりする効果と、今回の議論の主題であるプレイヤーのライフを一気に0へと削るような極端な優位攻撃には大きな違いがあります。プレイヤーが対処する手段がないままゲームが終了することは、最も大きいエージェンシーの喪失です。これこそが、私たちが是正しようとしてる最も極端なエージェンシーの喪失です。

反省と軌道修正

では、これからどのように進んでいくべきでしょうか? 第一に、次の5年とその先に渡って私たちを導くデザイン原則を今更新するべきです。当初の原則は私たちのゲームデザインの支柱となるべく構築されましたが、今やそれらの原則をゲーム開発にも適用し、フレッシュ&ブラッドを作り上げる過程において、関連性はありつつも2つの独立した機能へと繋げていくことが重要です。

フレッシュ&ブラッドのデザインと開発の原則2025

以下のデザインと開発における原則は、フレッシュ&ブラッドのゲームシステムの基本構造を基にゲーム要素を作成する際の指針となります。基本構造には以下が含まれます。

  • アクションポイント
  • リソースポイント
  • 知力
  • ライフ
  • パワー
  • 防御
  • 能力

I. クラス、タレント、ヒーローのアイデンティティ

  • クラス、タレント、キャラクターの本質を体現するヒーローを作成します。
  • クラスやタレントのユニークなメカニズムのアイデンティティを構築し、保ちます。

II. エージェンシーの強化

  • プレイヤーが対戦相手のゲームプランに影響を与える選択肢が持てるカードプール及びメタゲームを構築します。
  • 勝利は優れた決断の積み重ねの果てに手にすることができるでしょう。

III. 全てのカードが重要

  • ゲーム内でデッキの全てのカードが勝敗に関与するアーキタイプが存在するよう、メタゲームを整備します。

IV. 勝利への道筋

  • ゲームを攻勢的優位へと導く戦略やカード間のシナジーを提供し、ほぼ全てのゲームがライフが0になる形で終わるようにします。
  • 攻勢的優位は、単一のターンでの爆発的な出力ではなく、複数のターンに渡って積み重ねて得られること(つまり、英断を積み重ねることでの勝利の獲得)を重点とします。
  • コンボデッキやワンターンキル (OTK) デッキが目標のキルターンを実行するためには、意味のある難しいクエストを完了させることを要求します。(例えばヴィセライやフローリアンのOTKは、OTKを実行するために何ターンもかけて充分な数の《ルーン陣》を溜める必要があります。ケイノを使用するプレイヤーは、何ターンもかけて記憶したままピッチスタッキングを完成させる必要があります)

第二に、極端な優位的攻撃を発生させる根本原因であるカード達を、公式トーナメントより除外する時がきました。

次のカードは2024年9月9日よりクラシックブリッツ禁止されます。

  • Art of War
  • 祖先との縁/Bonds of Ancestry
  • Cash In
  • 神秘の教義の折本/Orihon of Mystic Tenets
  • Tome of Aetherwind
  • Tome of Divinity
  • Tome of Fyendal
  • Tome of Firebrand

次のカードは2024年9月9日よりリビングレジェンド制限カードになります。

  • 祖先との縁/Bonds of Ancestry (デッキには《祖先との縁》という名前のカードを1枚のみ入れることができます)

Art of War
《Art of War》は『Arcane Rising』で印刷されて以降、競技シーンの柱の1つであり続けました。このカードは、クラシックとブリッツから除外されるカードの中で最も重要なカードです。

「《Bloodrush Bellow》は問題ないのに、何故《Art of War》は禁止なのか?」と疑問に思う人もいるかもしれません。テキストだけ読むと、どちらも1リソースを支払い、2枚のカードと2枚のカードを交換し、バフという (典型的な) 見返りを得る類似点があります。

しかし《Art of War》は汎用カードです。そのため、2020年2月の発売以来、追加されていく全てのカードと相互作用を得られる特権を享受してきました。対して、《Bloodrush Bellow》を使えるのは野人ヒーローのみです。

カードプールが拡大していく中で、《Art of War》のコストを"チート"する方法が数多く登場しました。例えば、追放ゾーンからプレイできる影カード、手札に戻る《Phoenix Flames》、手札に作成される《臥虎》などです。これらは《Art of War》の現存する"餌"です。私たちは今後数年間で探求したい多くの大切なデザイン空間がありますが、《Art of War》が構築フォーマットに存在し続ける場合、このカードによって利用され続けることが予想されます。このカードはこのリストの中で、極端な優位攻撃を生み出す悪名高いカードの1枚であり、これは新しいデザインと開発の原則で抑制しようとしている要素に他なりません。《Art of War》は存在するだけでゲームデザインや開発の調整を余儀なくされる、抑圧的な存在となっていました。

祖先との縁/Bonds of Ancestry
プロツアー:アムステルダムの直前に黄と青の《祖先との縁》は禁止になりました。この禁止によってゼンの勢いが弱まることを期待しましたが、実際にはプロツアーのトップデッキの1つであり続けました。プロツアーでのゼンの活躍を経て、今回はゼンの強さを他のデッキと同水準まで戻します。

プロツアー:アムステルダムやその後のコーリングのライブ配信のゲームで体現されましたが、ゼンはしばしば《祖先との縁 (赤)》を利用し《Art of War》無しで、これまでに述べたエージェンシーの許容範囲を超える優位的な攻撃を実現していました。

これはカツのファンにとって厳しい決定かもしれませんが、カツが《祖先との縁》で行っていたことも許容範囲を超える行動でした。私たちは将来的にカツを使用するプレイヤーのため、今後の拡張枠で縁が残していった穴を埋めるカードを提供する計画です。

《祖先との縁》はリビングレジェンドフォーマットでも強い影響を及ぼしています。そのためクラシック、ブリッツど同様の理由で制限リストに追加されました。

Cash In
《Cash In》は現在問題ではありませんが、《金貨》がより普及したとき、2枚のカードを引くコストがますます低くなります。その時が来る前にこのカードを禁止します。

Tome of Firebrand
《Tome of Firebrand》は《Cash In》と同様に現在は問題ではありません。しかし、竜系のカードプールが拡大するにつれ、プレイするための条件は簡単になっていきます。

神秘の教義の折本/Orihon of Mystic Tenets
《神秘の教義の折本》が伝説であることは、私たちが2023年初頭の時点でカードドローをどのように考えていたかを示しています。

折本の問題の一つは、《十二花弁の袈裟》によって簡単に2枚のカードを3枚のカードに交換できるようになったことです。これによって、デザインが当初意図した2.33枚のカードを3枚にするが崩れました。折本はデッキに1枚のみ入れることができるカードですが、更新されたデザインと開発の原則に照らし合わせると、単純に原則から逸脱したカードになっています。

Tome of Divinity
《Tome of Divinity》は《神秘の教義の折本》と同様に、クエスト (ソウルにカードを入れる) を達成することで、2.33枚のカードを3枚に交換することを意図してデザインされました。《Vestige of Sol》と組み合わせることで、2枚を3枚へと交換し、更に引いたカードをピッチするとVestigeから追加のリソースを生み出せるため、強力な対価を手にすることができます。

《Tome of Divinity》は折本よりもデザイン的に優れています。達成する必要があるクエストは意味があるものです。また、防御値が無い黄色のカードのためデッキに入れるデメリットも大きくなっています。しかし《Tome of Divinity》の最大の問題点は同じターンに複数枚プレイできることです。これはときどき、対戦相手にとって絶望的なゲーム状態を作り出します。

《Tome of Divinity》によってもたらされる結果は、他のクラスが行うカードドローと異なる場合があります。通常、このドローは即座に優位な戦闘ダメージを発生させるのではなく、複数のオーラをプレイし、対処が困難な状況を盤面に作り出します。ゲームはその後数ターン以上続くかもしれませんが、実質的には重なった《Tome of Divinity》が2枚プレイされた段階でゲームは終わったも同然です。

Tome of Fyendal
《Tome of Fyendal》は『Welcome to Rathe』で登場した、2枚ドローの元祖となるカードです。アクションポイントを消費する点で、ドローカードの理想的なデザインをしているとも言えます。しかし問題は汎用カードであることです。これにより機械技師や稲妻のようなアクションポイントを効率的に増やせるヒーローや、アクションポイントの消費を回避できる魔術師のようなヒーローもプレイ可能です。

新しい稲妻と魔術師のヒーローがロゼッタで登場し、ケイノは新しい魔術師カードで勢力を増し、ダッシュ I/Oが10月のアーモリーデッキでサポートされます。それにより、このカードのアクションポイントのコストを無かったことにするのは、今まで以上に簡単になります。

Tome of Aetherwind
《Tome of Aetherwind》は妥当なカードデザインをしています。プレイ時にアクションポイントを消費し、赤で防御値が2のため、強く使える順番でこのカードを引かなかった場合、大きなデメリットとなります。また、更新されたデザインと開発の原則においてもクラスアイデンティティの項目を満たすカードです。しかし、ケイノやオシリオは簡単にこのカードの実質的なコストを無い状態にすることができます。

《Tome of Aetherwind》は厄介な岐路にあるカードです。アクションポイントのコストの問題を簡単に回避できない魔術師 (アイスランダー、ヴァーダンス、皇帝、Blaze)にとっては使いにくいカードですが、簡単に回避できる魔術師 (ケイノ、オシリオ) にとっては破滅的に強いカードです。このカードは、"公平"なプレイを維持することが難しいカードです。

禁止されないカードについて
なぜ《Three of a Kind》、《Tome of Harvests》、《Tome of the Arknight》そして《Tome of Imperial Flame》は禁止されなかったのでしょう?

《Three of a Kind》と《Tome of Harvests》には同じターンにプレイできない制限や、その後にプレイできるカードを制限する効果が自然な形でテキストに組み込まれています。

《Tome of the Arknight》には、現在の状態で充分に問題ないほど (良質な) 不確実性が組み込まれています。

《Tome of Imperial Flame》はデッキ構築に強い制限をかけ、防御面での脆弱性も持っています。そして最も重要なポイントは、現段階では少数存在する《Phoenix Flame》の相互作用以外ではカードを増やすことが出来ない点です。《Phoenix Flame》を手札に戻す手段 (または同様の赤い"餌"生成手段) が増えれば、将来的にこのカードも他の書物同様、禁止リストに加わるかもしれません。

まとめ

今回の変更は大きな変更です。以前にも述べたように、私たちが禁止制限リストを使用する際の理念は、ネガティブなプレイ体験を引き起こすカードの相互作用に対処するだけではなく、構築フォーマットを積極的に管理するツールとしても活用しています。

今回の変更後も、クラシックフォーマットではプレイ体験が二極化するいくつかのマッチアップが残ることを認識しています。これらのクラス、例えば守護者や戦士においては、今後の製品に含まれるカードがその対戦でのプレイ体験を是正する方向に働くことを期待しています。

ブリッツについては、フォーマット全体をより高い地点から俯瞰し、11月30日から始まる次の先鋒戦シーズンの前に実装すべき内容がないか検討を行っています。

今後数週間のうちに、Senior Game DesignerかつLead DeveloperのBryan Gottliebと共にポッドキャストを行い、これらの変更と明るい未来についてお話しする予定です。公式のフレッシュ&ブラッドYouTubeへ是非ご参加ください。

彼らの伝説は生き続ける

別れはいつも辛いものです。特に《Art of War》はこの5年間、フレッシュ&ブラッドの象徴的なカードの一つであり、私たちは禁止されたこれらのカードのプレイを楽しんでいた多くのファンがいることを理解しています。クラシックやブリッツで終わりを迎えたのは残念ですが、これらの象徴的なカードはリビングレジェンドフォーマットで生き続け、あなたがこれらのカードをプレイする機会はまだ残されています。

リビングレジェンドは、私たちがサポートを続けていくフォーマットです。現在開催されている先鋒戦シーズン9の選択可能なフォーマットに含まれていることや、今年後半に開催される先鋒戦シーズン10でも再度登場すること、更に12月14日と15日のシカゴではコーリングのフォーマットとして採用されたことがその証拠です。

リビングレジェンドはこれまでに産まれた最も強力なヒーローやカードの集合地点であり、これらの象徴的なカードを今後何年もプレイし続けることができるフォーマットです。

次回の禁止制限告知の発表予定

次の禁止制限告知の発表は2024年11月11日 (月) を予定しています (アメリカ時間)。